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善人のばあさんとじいさんに拾われた桃から生まれた桃太郎。もちろん善人に育ち、村の善なる民を虐げる悪い鬼をこらしめるために勇気を出して仲間と共に旅に出た。
そして悪い鬼の住まう鬼ヶ島で皆さん周知の大活躍。
宝物を沢山手に入れた善人の桃太郎は村人たちにもてはやされ、何百年と経過した今でも確固たる名声と善人たる地位に不動として君臨している。
善を盲目に好み、悪を盲目に挫くこの国の人間性を象徴するかのような話だ。
桃太郎の話を読んでいて、誰も考えないだろう。
「もし、桃太郎が金に汚い奴だったら?」だとか、「もし桃太郎の女癖が悪かったら?」なんて。
世間とはそれくらい正義に盲目だ。物語は桃太郎を英雄として描いている。「良い人」として出されたものを、人はわざわざ悪く想像はしないだろう。
でも、悪者なら、どうだろう?
桃太郎を読んでいて、読者は鬼のことをどう考えるだろうか。
「きっと宝物を奪い取るために人も殺している筈。」だとか、「むしろ人を食べるような凶暴な奴ら」とか、考える人も居るかも知れない。
「もしかしたら村人が桃太郎を騙しただけで、鬼は被害者かもしれない」と考える者はいないだろう。
悪者への悪いイメージは膨張する。良い奴への良いイメージが膨張するのと同じように。一度「悪」と見なされて刷り込まれてしまったものが、「良」の部分を他者に見出されることは稀だ。
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