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大抵、彼に出会った人々は彼のことを「死神」と呼ぶ。
死神という響きに、「善」を見出す者はいないだろう。
タロットでも、死神とは災厄の象徴だ。
死の神、死を司る神。
生きている人間から見れば、「死」とはそれだけで「悪」であるのだろう。
だからそれを取り扱う彼が人々から死神と呼ばれ、遠ざけられる存在となってしまったのも頷ける。
だが、今一度考えてみてほしい。
「善」とは何を指すか。
「悪」とは何か。
「善」が必要なものとするのならば、「悪」は不必要なものなのだろうか?
この世は広い。果てが無いわけではないが、最果てに何があるのか、知る者は少ない。
果てを知った者はきっと言うだろう、「善」「悪」で量れるものなどごく僅かだと。
この世の何万何億という多種多様な人の平均的な善悪を鵜呑みにし、流れ続ける時間に身を任せてしまうのではなく、君の心を持って、眼を持って、「善」と「悪」の本当の姿を見てみてほしい。
今まで「善」と思っていたものは、本当に君に寄り添い、慈しむ形をしているか。
今まで「悪」としてきたものは、本当にそんな凶悪な形をしているだろうか。
立ち止まれ、歩まず目を開け。
君の育むべき「善」とは何か。
君の忌むべき「悪」とは何か。
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