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部屋に閉じ込められたオリアーナは、一日中ソファに座ったまま、ぼんやりとして過ごしていた。
見かねた侍女から刺繍をすることを勧められて、久しぶりに刺繍針を手に取った。
けれど、しばらく針を刺しているうちに、シスターたちを思い出して、涙が溢れそうになってしまう。
大神殿にいた頃は、神に捧げるための刺繍を皆でするのが日課だった。
いつも他愛もないおしゃべりをしながら、作業していたときのことが頭に浮かび、彼女たちが心配で仕方がなかった。
グレイアムがあのとき、大神殿のシスターたちについて言及したのは、彼女たちがジェフリーズ家の管理下にあるのだという脅しではないのか。それを考え出すと途端に手が止まり、なにもできなくなってしまうのだ。
侍女の次はカーヤが、甘いお菓子や紅茶を持ってきてオリアーナを励まそうとした。
オリアーナとしてはそれを笑顔で受け取っているつもりだが、カーヤの表情は曇ったままだ。皆に心配をかけていることがわかっているのに、心はどうにもならない。
運ばれてくるお菓子にすらあまり手をつけない状況が続き、いつの間にか夕日の沈む時刻になっていた。
ダイニングルームには、一人分の食事が用意された。イザークはここへはこないということだ。
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