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執務で忙しくしているイザークと、食事の時間が別々になることは、今まで何度もあった。
けれど、今までは大使歓迎の一件で、オリアーナ自身もやらなければならないことが山積だったので、それを寂しいと感じたことはなかった。
先の見えない不安と寂しさで、オリアーナの心はすっかり沈んでしまった。
「オリアーナ様の好きなものをご用意させていただきましたから、お食事は召し上がってくださいね? そんなご様子では病気になってしまいますよ」
食欲のないオリアーナを侍女が気遣う。
「……はい、いただきます」
いつものように、食事前の祈りの言葉を唱えてから、まずはスープを口に運んだ。
野菜を長時間煮込んで作られるスープは、温かく素朴な味わいだ。好物のはずなのに、今のオリアーナには、そのしょっぱさが涙の味に感じられた。
侍女やカーヤが心配するから、彼女はそれでもなんとか食事を勧めようとした。結局、途中で胸が苦しくなって、半分以上残してしまう。
食事のあとは、侍女に促されるまま就寝の準備を整えて、寝台の上に横になる。
時間が経つに連れ、今夜もイザークが帰って来ないのだと、否応なしに理解していく。
オリアーナは侍女やカーヤを下がらせたあと、枕に顔を埋めて静かに涙を流した。
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