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「この国で、おまえのフォルテラ行きに協力するものなど誰もいない。部屋を出ることくらいは許可するが、逃げられると思うなよ」
グレイアムを追い出した今、オリアーナは北へ向かう手段を持たない。
以前に町へ出かけたときオリアーナの日焼けとは無縁の金髪や白い肌は、フードで隠さなければならないほど目立つと言われていた。
王妃だということまではわからなくても、裕福な家の者だということは、誰にでも想像できる。
世間知らずではあるが、女性一人の旅が危険で、フォルテラまで無事にたどり着けるはずがないことくらいは彼女もわかっていた。
「戦になるのですか?」
「今、おまえに話せることはなにもない」
話は終わったとばかりに、イザークが背を向けた。
オリアーナは必死に彼の服を掴む。
「まだ執務が終わられないのですか? お忙しいのは存じておりますが、せめて夜は……。私! 陛下がまだお仕事をされているのなら、ずっと待っていますから」
「忙しいから無理だ。迷惑だから先に寝ろ。……ではもう行かねばならん」
きっぱりと拒絶されると、オリアーナはそれ以上なにもできず、遠ざかる背中をただ見つめていた。
その晩も、次の日も、イザークは王の私室に戻らなかった。
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