招かれざる使者(4)

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招かれざる使者(4)

 三日後、オリアーナは図書室を訪れた。この二月ほど、大使歓迎の件で忙しくしていたので気がつかなかったが、外出許可があっても彼女が行ける場所は限られていた。  皆が忙しくしているこの時期に、城下の町で羽を伸ばすなどもってのほか。そうなると彼女が行けるのは、図書室と空中庭園、それから神殿くらいだ。  同行してくれたカーヤがお茶を取りに行っているあいだに、書架を覗いて本を選ぶ。  なにかしたいという焦りで、逆になにも手につかない状態だ。  歴史の本を読めば、過去にあった悲惨な戦のページで、紙をめくる手が止まる。  物語を読めば、自分だけが遊んでいるような罪悪感に苛まれる。  ヴァレンツの文化について学べば、出て行くと言っておきながら、なにをしているのだろうと虚しくなる。  オリアーナがフォルテラの政変の件に関わることは、イザークが許さない。だからどうしようもない。心の中で、そんな言い訳ばかりをしていた。 (本当に、それでいいのでしょうか……?)  これでは聖女だった頃と同じだ。民の暮らしが苦しいとわかっていたのに、王族としてなにもできなかった。     
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