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ファーディナンド王の命令で聖女になり、大神殿に閉じ込められているから、王のすることに異議を唱えることが許されていないから、仕方がない。
そうやってなにもせずに暮らしているのを嫌っていたというのに、結局変わっていなかった。
大きく違うのは、フォルテラでは疎まれていたせいで、なにもさせてもらえなかったのに対して、今は……。
(陛下は、私が傷つかないように嫌な役回りをされている? 私に選ばせないようにしているの……?)
何度も抱かれたあの晩に、イザークがぶつけてきた激情を彼女は思い出す。
ひどいことをしているように見せかけて、本当はそうではないと知っていた。
「……痛い」
イザークの優しさに触れると、胸の奥がぎゅっと締めつけられ、張り裂けそうなほど痛くて苦しい。
オリアーナは目を閉じて、はじめてその痛みをやり過ごさずに向き合った。
激しく抱かれたあの晩、もしオリアーナがイザークの名前を呼んでいたら、どうなっていたのだろう。
大使歓迎の宴の晩、あのまま彼に優しく抱かれていたら、どんなふうに壊れていたのだろう。
本当はもう答えを知っていて、ただ言葉にしたら戻れなくなるから、理解できないふりをしていただけだ。
(私……、陛下に気持ちをきちんとお伝えしていません)
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