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会ってくれないから、諦める。そんな彼女はイザークが認めてくれた〝オリアーナ〟のすることではない。
急に視界が開けたような感覚だった。
カーヤが戻ってきたら、いっそ執務室に押しかけよう。拒絶されそうになっても追いかけて、今度こそ話を聞いてもらおう。オリアーナはそんな決意をして顔を上げた。
するとちょうど図書室の扉が開く音がして、そちらへ視線を向ける。
「聖女様、こちらにいらっしゃいましたか」
「バルツァー殿?」
カーヤではなく、本や書類を抱えたバルツァーだった。
彼は抱えていた荷物を、中央のテーブルに置いてから、オリアーナのほうへ歩み寄る。
「聖女様は、ここに留まるおつもりですか?」
唐突な質問に、彼女はすぐには答えられなかった。
ついさっき、イザークともう一度きちんと話をしようと決意したばかりだ。こうしたいという思いはあるが、それを言葉にするにはまだ時間が必要だった。
「……迷っています。陛下はお許しにはならないでしょうけど、それは陛下の優しさなんだとわかっていますから」
「優しさ?」
「ええ。私が自らの意思で残ると決めて、そして戦になったら傷つくから。〝俺が強制した〟ということにするつもりなのでしょう? でも、それは逃げだと気がつきました」
イザークとオリアーナには決定的な違いがある。
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