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『オリアーナへ。大事な話がある。本日午後、神殿で待っているから来るように。おまえに花冠をやる。――イザーク』
お世辞にも綺麗とは言いがたい文字で、そう綴られていた。文は短く、用件だけを伝えるところが、いかにも彼らしい。
「花冠?」
それはオリアーナがずっとあこがれていて、欲しがっていたものだ。
そもそも花婿が花冠を手ずから作るという風習が存在しなかったのだから、彼女としても今さらもらえるとは思っていなかった。
イザークはつい先日も「性に合わん」と言い切っていた。そんなものをわざわざ用意するくらい、彼は真剣なのだとわかる。
神殿で花冠を用意して待つというのだから、行うことは一つだけ。
オリアーナとしても、彼と離れずになにができるのかを模索しようと決意したばかりだった。
そのタイミングでもたらされたイザークからの手紙に、彼女の心は嘘のように浮上した。
「なにが書かれていたのですか?」
「あの、陛下がお話をしてくださるそうなんです。先日、言い争いをしてしまいましたから、仲直り、でしょうか?」
きっと誰が見ても、今のオリアーナは浮かれているように見えるはずだ。
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