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そして、よくわからない行動をするイザークを、彼女は恐れていた。
「どうだ? 俺の評判くらい知っているだろう? 血塗られて、裏切りを重ねた成り上がりの元傭兵に抱かれる気持ちは?」
オリアーナはすぐに答えられなかった。彼女の中に、確かに恐怖が存在したから。怖いと感じるその気持ちを、素直に口に出していいはずがない。
「……また震えているな。それで俺が止めてやるとは思わないほうがいい」
慎ましい聖女の衣装に大きな手がかかった。仕組みのわからない異国の服装を脱がせるのが面倒になったのか、彼は強引に剥ぎ取る。繊細な生地で仕立てられた白い衣装は、嫌な音を立てて破れた。
「……優しく、してください。お願い……」
ほとんどだれにも見せたことのない素肌が、今日はじめて会った男に暴かれていく。
じんわりと目の奥が熱くなるのに堪えることが、オリアーナにできる精一杯だった。
「少し、黙っていろ」
これ以上の会話を遮るかのように、イザークが覆い被さり唇が塞がれた。
◇ ◇ ◇
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