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聞きたくないと思っても聞こえてくる悪口。見てほしくないと思ってもにらんでくる白い目。昨日まで僕に媚売ってたヤツらが、今日には敵になっていた。
それでも、女子だけに知られてるうちはまだよかった。もちろんつらいけど、身体的な痛みは伴わないからだ。でもいつの間にか男子の間にも広まって、いじめの標的にされて暴力を受けるようになった。たぶん、何人かの男子はエリナのことが好きで、僕は妬まれてたんだと思う。
それとも、きっかけはなんだってよかったのかな。今でもまだ、いじめは完全になくなったわけじゃないから。殴られて、助けを求めるようにエリナを見ても、彼女は見向きもしない。僕はエリナを捨てたつもりでいたけど、本当に捨てられたのは僕かもしれない。
そうそう、僕とエリナが別れた話だったね。僕は、人気者の僕に戻りたかった。――エリナと別れてみたらどうだろう。ふと、そんな考えが浮かんできた。いじめの原因はエリナと付き合ってることにあるんだから、と。彼女のことは好きだったけど、命をかけてまで、って程じゃなかったし。
また「モテる男」に戻るために、僕はエリナを捨てた。
僕が彼女を捨てるとき――それは、自分の身を守らなくてはならなくなったとき。僕は自分をカッコよくみせるためなら、平気で人を傷つける。まあ、エリナが傷ついたかどうかはわからないけど。
僕がモテていたのはきっと、みんながこのことを知らないからだと思う。
だけど僕は、もうモテない。
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