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 ずっと彼女と一緒にいると決めた僕は、その約束を守ることができなかった。 「ああ、別れたんだな」  この文だけ見たら誰もがそう思うだろうけど、実際はそんな簡単なもんじゃない。僕らはまだ愛し合っていた――少し大げさかもしれないけど、少なくとも、お互いのことを嫌いではなかったのに。本当は、別れたくなんかなかった。  じゃあ、なんで別れたかって?決まってるさ、彼女のためだよ。――そんなふうに、堂々と言えればよかったのに。正直に言うと、怖かったから。  なにが怖かったかって?うわさだよ、うわさ。男子のいじめの標的になるのも、女子に白い目で見られるのもごめんだよ。  女子なんか怖くない?なに言ってんだよ。表から見ればそうかもしれない。いい子ブリっ子で、一人でトイレにも行けないヤツらの、どこが怖いもんか。――僕も最近まではそう思っていた。でも、女子の裏を見てみろよ。他人の悪口言いまくり、人のものを隠すなんていう陰湿ないじめは後を絶たない。とにかく、ネチネチネチネチしつこいんだよ。  その矛先が彼女に向けられたらと思うと……。というのはウソ。別れた理由の後づけなんて、いくらでもできる。サッカー部のキャプテンで顔もまあまあイケてる僕は、結構モテる。去年のバレンタインなんか、十二人もの女子からチョコをもらった。そんな僕と付き合ってる彼女に、ほかの女子は嫉妬するかもしれない。そう言って彼女と別れたが、女子に嫌われるのは僕のほうだ。 「ちょっと、片山ってエリナと付き合ってるってよ」 「えー、エリナかわいそっ」 「アイツ、絶対エリナのこと顔でえらんでる」 「だよねー。てかアイツ、自分のことエリナと付き合えるくらいカッコいいと思ってんのかな」 「うっそ、ちょーナルシスト」
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