俺のもの

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 マンションを購入した。  30年ローン。俺が腹をくくるのは今回で二度目だ。一度目は嫁にプロポーズした時。この時、腹をくくることに抵抗はなく、嫁から「OK」の返事をもらえた時は素直に嬉しく、俺の未来はきっと輝かしいと信じて疑いもしなかった。  だが今回は違う。俺は本当に腹をくくったのだ。  『この嫁をあと30年は養う』ということ。  「ちょっとパパー、ちゃんとやってる? 新しい家にその小汚いガラクタ持っていくとか言わないでよ。ちゃんと捨ててよね。いい加減大人になってよ」  嫁の小ばかにしきった声が俺のHP(ヒットポイント)を奪う。『痛恨の一撃』というやつだ。これを食らうと俺は異様に眠くなる。  あー……。大人になるって、なんだ?  喉まで出かかったその言葉を、キャッキャと楽し気に走り回る3人の娘たちの声が消し去る。
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