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「この世界にはいろいろなものを呼び寄せる力を持つ者が、極稀に生まれるのを知っている?」
「ああ、ブリンガーって呼ばれてるやつらのことだろ?」
「そう。その力を持つ者はそれぞれ様々なものを呼び寄せ、引き寄せる。……その人の意思によらずに」
一度言葉を切り、すまなそうにクィリスを見て続けた。
「彼らは本当に色々な物を引き寄せる。例えばそれは雨であり、風であり、病であったり、怪我であったりね。そして私もその中の一人」
クィリスの息をのむ音が聞こえ、彼が聞きたいであろう質問を無言で促した。
「あんたは、一体何を引き寄せる?」
「私が引き寄せるのは、『争い』」
思わずぽかんとした顔のクィリスに苦笑して、もう少し説明した方がいいのだと悟る。
「そうね……口喧嘩みたいな規模の小さなものから、戦争のように規模の大きなものまで様々ね。たとえ原因となるものが他にあったとしても、そのときその場所で争いが起こるのは全て私が引き寄せてしまうからなんだ」
言い終わってクィリスはしばらく考えたかと思うと、驚いたような表情を浮かべた。
「そんなこと……、……じゃあ昨夜のこともあんたが呼び寄せた争いだって?」
「そういうことになるね。いかんせんこの力は制御できるものじゃない。結果巻き込んでしまったのは私のせいだ。ごめん、巻き込むつもりはなかったんだ。本当に申し訳ない」
目を伏せて謝るローチェの姿に、彼は責めるような目を向けなかった。
「いや、無事だったんだからいいさ。それよりあんた、使者なのになんで軍人に襲われてたんだよ? まさかブリンガーは理由もなしにいろんなもんを呼ぶのか?」
「呼び寄せれば自然と理由も発生してくるから理由なしに、となることはない。昨日のアレは……。私たちブリンガーは互いに互いを磁石のように引き合う性質も持っている。エルトリア帝国の軍上層部はその性質を利用して、ある種類のブリンガーを手に入れたかったんじゃないかな」
「ある種類のブリンガー?」
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