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「止まれ」
距離もそこまで離れていないので、馬には乗らず手綱を引いて関所までたどり着くと、案の定関所番兵に止められた。
「ここは今、なぜ交通が滞っているのでしょうか?」
かっちりとした帝国軍の制服をゆるく着崩した若い男は、少し面倒そうな顔をしたものの答えてくれた。
「この先で土砂崩れが起こったのさ」
男はそこで言葉を切り、彼女の腰に帯びている剣を見とめて怪訝そうな顔をした。
「すまねえ、名乗ってもらえねえか?」
「……何か、気になることでも?」
あまり答えたくない、とあからさまに態度に出した彼女を見て、何を思ったのか、男は大声で笑い出した。
「軍人相手にしらばっくれんのか! 嫌いじゃねえよ? いや気に入ったぜ、お前! おし、ここは通せねえんだけどな、別の道を教えてやんよ」
にかりと人の良い笑みを浮かべてウインクをかました彼は、彼女の手を掴んでとても楽しそうに進んでいく。
「……それでいいの、番兵さん?」
「ま、良いんじゃねえ?」
「良いわけがないだろう、クィリス」
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