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話し合った結果、今度こそクィリスに先導してもらい、安全な山道を進んで国境まで迂回することとなった。ローチェは遠慮したのだが、クィリスは親切にも国境の関所まで案内についてくれるという。
ふと、こちらを見ていたクィリスと目があった。
「へえ、あんたそんな身分を持ってたのか。だったらさっさと名乗れば楽だったろうに」
「……身分はときに枷になることもあるからね。それに、この身分は一時的なもので本来の私はそんな地位を持たない。名乗らずに済むならそれに越したことはないよ」
「そんなもんか」
クィリスは理解できないという目をしていた。目が「俺なら地位を得たらそこら中で名乗りまくるのに」と言っていた。こればかりは体感しなければ理解できなくても仕方のないことだと思う。
「にしても可愛い名前だな?」
準備する手を休めて、にやにやとからかうように笑んだクィリスには決して軽くはない肘鉄を横腹にお見舞いしてやった。
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