馬と人

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 後ろを振り返ったローチェの目の前にはクィリスと同じ帝国軍の制服をまとった男が二人迫っていた。  襲撃者である二人組は片や手に細身の剣を、片や矢をつがえた弓を構えて確実にローチェの急所を狙っていた。弓使いは少し離れた場所から隙なくこちらを狙っている。  ローチェは鞘に重なるようにして隠れていたもう一つの剣も抜き放ち、首筋を狙う刃を弾いた。  相手は弾かれた剣をそのままに、手首を返して持ち替え振り下ろしてくる。とっさに飛びのいて避けたが、鎧が無ければ今頃は胸を裂かれていただろう。  瞬間目の端に矢を放つ姿が映り、風切り音と共に飛んできた矢を剣で叩き落とした。距離を置いたことで弓矢の射程範囲に入ってしまっていた。  ローチェは一旦矢を避けることのできるだけの距離を置いて剣をしまい、今度は鞘ごと剣をベルトから外して構えた。襲い来る斬撃をすんでのところで避け、頃合いを見計らって迫ってきた刃を回避、突き出された剣の腹に自分の体重をかけて思いっきり剣を鞘ごと叩きつけた。  ばきん、と音をたてて刺客の一人の剣が真っ二つに折れた。ひるんだ隙を突いて素早く相手の懐に入り込み、鞘ごと相手の鳩尾に剣を突き立てる。  どさりと昏倒する一人を見てさっと身を翻し、木のそばで竦んで動けなくなっていたクィリスの馬へ駆け寄った。  弓使いの男はローチェが馬で逃げようとしていることがわかると、追撃はせずに闇の中へと駆け去って行った。
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