あとのまつり

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「うわっ。それ、マジで言ってんの? 親父ギャグ? H2Oは水だよ、水。これ、水と何か関係あるのかな? 」 「あ、水か。水は関係なさそうだけど?」 「向き、かな?」  彼女がヒョイと物体を傾ける。 「その向きだと『エ』、『N』、『O』にも見てるね」 「エNO? 余計に意味わかんないんだけどー。これ、もしかしてホントに『エロ』とか、そういう意味だったりして。あはは! ウケるんだけどー」  いや、何が面白いのか僕には理解不能だ。彼女が笑いながら『エ』ボタンを連打している。その顔はほんのり、上気していた。  あれ? ちょっとヤバい感じ? 「これ『o』、『r』、『z』とかでも面白かったのになぁ」 「それはつまんない」  渾身のボケが華麗に滑った。まさに『orz』である。 「やっぱりH2Oなのかなぁ。アルファベットの『O』じゃなくて、数字の『0』とか?」 「H20? 平成20年って事?」 「製造日? それをボタンに記す意味はわかんない、か。数字の『2』じゃなく、アルファベットの 『Z』とか?」 「HZ0?」 「そんな元素記号とか略語とかはないか。ますます意味わからないね。何にせよ、水は関係なさそう」 「だよねぇ。じゃあ、これは単なるゴミって事で。捨てちゃえ!」  彼女はそう言うと、何の躊躇いもなく川にポイッと投げ捨てた。謎の物体はチャポン、と静かな音を立てると、あっという間に川底へ沈んでいった。
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