第3話:また明日会えるように

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第3話:また明日会えるように

「キミは誰?」  リセットされる風景。それはいつだって新しい体験だけれど、時間のループから抜け出せない経験。記憶が維持されるというのは、日々の繋がりを実感することに他ならない。 「僕は前島颯太(さきしまそうた)」  途切れた時間、それを繋ぎ合わすことで断片的な時間は物語となっていく。とはいえ、それは必ずしも希望に満ちた幸福な物語だけではない。むしろ連続的な絶望の中で、苦しみもがく物語の方が日常に近いのかもしれない。 「颯太。綺麗な名前ね」  物語を紡ぎだすこと、それは彼女にとって本当に幸せなことなのだろうか。スケッチブックを手にしながら、そんな葛藤で胸がいっぱいになる。僕のことを覚えていてほしい、それは僕自身の望みであって、美琴(みこと)の意思ではないのだから。 「砂浜から見える夕焼けが好きで、その場所で君のことも好きになった」  だとしても、僕はもう一度、君と過去を語り合いたい。これから先のことを話していたい。同じ物語を一緒に歩いていきたい。 「夕焼け……」  スケッチブックを取り出すと、僕はそこに自分の名前を書いていく。 「記憶が続かないって話は覚えているか?」     
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