嫌い嫌い讃歌

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 まわりを過ぎる同級生より、頭はんぶんちいさなチカ。  華奢な肩、ふくよかな頬、穏やかに垂れた眉。  長く伸ばした髪が朝日を浴びて、ほんの少し、茶色く見える。  染めてもいないのに色素のうすい、柔らかそうな髪の色。  化粧をしていない彼女の顔は、年よりも幼く、儚げで。  瞬きのたびに薄くなり、そのまま消えてしまいそうな気がしてくる。  季節外れの転校と同じように、唐突に。  懐いてきたのと同じように、意味もなく。  あるとき突然、いなくなってしまいそうな気がしてくる。   「……どうしたの。遅刻するよ」  わたしが言うと、チカは笑った。   「ひまりちゃん、好きやで」  ……なんだ。わたしは呆れた。  ……なんだ。いつものチカじゃないか。  ……なんだ。もしかしたら、傷つけたかと思ったじゃないか。  もう追いかけてこないのかと、思ったじゃないか。  馬鹿馬鹿しい。  わたしは背を向けた。  校門が見えてくる。腕時計をチラリとみれば、まだまだ、登校時間には余裕があった。  わたしは少し歩くスピードを落とした。わたしの横に、チカの歩みが並んだ。 「ねーえ、ひまりちゃん」 「なによ」 「あたし、ひまりちゃんのこと大嫌い」  わたしが足をすくませるより早く、チカはわたしを追い抜き、振り向く。 「ひまりちゃんのマネしてみただけやで!」  チカは笑っていた。  わたしの横に戻り、手を掴んで、指を絡ませてくる。  わたしはそれを握り返す。  そうしてわたしたちはいつものように、並んで歩き始めた。    
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