嫌い嫌い讃歌

3/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 そのふんわりした白い顔に、わたしは微笑んで言った。 「わたし、羽曳野(はびきの)ひまり。よろしくね」  ……ここまでは、よかった。    だが、それから4カ月。なにをもって懐いたのか、チカはずっと、わたしの後ろをついて歩いている。 「朝イチからひまりちゃんに会えたら、今日は1日ええ日やわ。眼福、眼福。ひまりちゃん髪の毛さらっさらやし、足ほっそいし、ほんまきれい」 「……どうも」 「その声がまた素敵やねん。ちょっと低めで、あったかくって。ああ、ええわあ。なんでそんなええ女やの。ええわあ」 「親戚のおばちゃんか、あんたは」 「あっあっいまのナイスツッコミ! ひまりちゃん、ちょっとあたしの関西ナイズドに染まってきたんちゃう?」 「いい加減にしてよ」  「クールなとこがまたソソる。ほんまあたしひまりちゃん好き好き」 「あっそうありがと、わたしはあんたが嫌いよ」  きっぱり、言い切る。チカはそれでも挫けない――先ほどよりもなお距離を詰めて、ひまりちゃん好き好きと繰り返してくるのだ。  ……いつもなら、そうしてくるはずだった。  しかし。  ふと、足音がやんだ。わたしはそのまま数歩を進み、なんとなく振り向いた。  チカは数歩ぶん、うしろで佇んでいた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!