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そのふんわりした白い顔に、わたしは微笑んで言った。
「わたし、羽曳野(はびきの)ひまり。よろしくね」
……ここまでは、よかった。
だが、それから4カ月。なにをもって懐いたのか、チカはずっと、わたしの後ろをついて歩いている。
「朝イチからひまりちゃんに会えたら、今日は1日ええ日やわ。眼福、眼福。ひまりちゃん髪の毛さらっさらやし、足ほっそいし、ほんまきれい」
「……どうも」
「その声がまた素敵やねん。ちょっと低めで、あったかくって。ああ、ええわあ。なんでそんなええ女やの。ええわあ」
「親戚のおばちゃんか、あんたは」
「あっあっいまのナイスツッコミ! ひまりちゃん、ちょっとあたしの関西ナイズドに染まってきたんちゃう?」
「いい加減にしてよ」
「クールなとこがまたソソる。ほんまあたしひまりちゃん好き好き」
「あっそうありがと、わたしはあんたが嫌いよ」
きっぱり、言い切る。チカはそれでも挫けない――先ほどよりもなお距離を詰めて、ひまりちゃん好き好きと繰り返してくるのだ。
……いつもなら、そうしてくるはずだった。
しかし。
ふと、足音がやんだ。わたしはそのまま数歩を進み、なんとなく振り向いた。
チカは数歩ぶん、うしろで佇んでいた。
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