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嫌い嫌い讃歌
わたしは潮見チカが嫌いだ。
わたしと同じ年、高校3年にもなって、化粧もしてない。
眉毛すらろくに整えてない女子力ド底辺。校則通りのスカート丈。校則ですらない白のミドルソックス。
ダサすぎるにもほどがある。
隣を歩かないでほしい。そばに来てほしくない。わたしは、そんなチカが嫌いだ。
「ひまりちゃん、おはよう!」
朝っぱらから後頭部に刺さる、甲高い声。同時にスルリと手をつながれる。
わたしはそれを振り払った。
「やめてよ」
「なにぃな、手ぇつなご思っただけやん」
「それをやめてって言ってるの」
「ええやん。ひまりちゃん一緒にガッコいこ。――あ、そのヘアピンすてきやね。どこで買ったん? あたしもおそろい欲しい」
関西弁なのに、糸を引くようなとろくさい喋り方。甘ったるくて、眠くなるようなことを言う。
わたしは前を向いたまま吐き捨てた。
「どこだっていいでしょ。真似しないでしょ」
「なんで真似したらあかんの? あたし、ひまりちゃんアコガレやねんもん。ほんまひまりちゃん素敵やわぁ」
……ヘアピンの話じゃなかったのか? なんで「ひまりちゃん」になってるんだ。
わたしは一瞥もくれないで、さっさと歩き進んでいった。
チカとわたしの身長差は、およそ20センチほどもある。
わたしが早足になれば、チカは普通には付いてこられない。
チカは小走りになっていた。トコトコ、忙しなく、小さな足音が付いてくる。
わたしはひそかに、舌打ちした。
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