あの日捨てたアルバムは二度と戻らない

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「すごいな」 古くからの友人の龍介が俺の期末テストの結果を見てそう言ったがその目には悲しみさえ含んでいる。 「これで中高のすべてのテストがトップだけど、お前は何をしたいんだ」 「分からない」 俺の言葉に龍介は更につらそうに顔をする。 「お前は何のためにこんなに頑張ったんだ?奏太?」 俺は自分の席から外の雪景色を見る。 冬は豪雪になる俺らの町。高校三年生の冬。俺の進路はまだ決まらない。 進学するか就職するかさえ決めていない。 決められないのだ。 両親は昔から勉強をしろと口酸っぱく言い、俺もそれに従ってきた。 大手の会社の役員の父に音楽教室を経営する母。 まわりは俺のことをサラブレッドと呼んだ。 誉められているのだと知り、俺も得意になっていた。 小学生のときは、レベルの高い中学に行くのが目標だった。 中学生のときは、レベルの高い高校に行くのが目標だった。 高校に入ったならレベルの高い大学に行くのが目標になると思っていた。 両親もそういう回答をする俺に安心をしていただろう。 それが変わったのは、高校二年のときの担任の言葉からだった。
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