9人が本棚に入れています
本棚に追加
「君は将来、何をしたいんだ?」
「レベルの高い大学に行ってから考えます」
職員室でまだ若い担任に邪険にそう告げたならば、担任は眉をひそませる。
「そうじゃない。夢はないのか?やりたいことはないのか?」
「だから大学に行ってから……」
担任は深々とため息を吐く。
「君は勉強は出来るが人間味がない。やりたいことくらい探しなさい。でなければ何も出来ないよ」
「はあ」
その晩、両親と囲んだ食卓でその話をすると、両親は烈火の如く怒り狂った。
「まずは勉強なんだよ!そんな教師の言うことは無視しろ!」
「夢を追って成功するなら、誰だって夢を追うわよ!」
「そうだよね」
両親の反応に対して冷静に言ったが、俺の胸にはわだかまりが生まれた。
俺は勉強以外、何が出来るんだろう?
まわりの同級生はそれぞれに好きなことがある。
音楽だったり、文学だったり、スポーツだったり、俺はどれもそこそこ出来るがどれも好きなことではない。
ミュージシャンに画家になりたいという同級生が子供に思えていた。
子供みたいに好きなことにはしゃぐみんなが理解出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!