あの日捨てたアルバムは二度と戻らない

3/7
前へ
/7ページ
次へ
「君は将来、何をしたいんだ?」 「レベルの高い大学に行ってから考えます」 職員室でまだ若い担任に邪険にそう告げたならば、担任は眉をひそませる。 「そうじゃない。夢はないのか?やりたいことはないのか?」 「だから大学に行ってから……」 担任は深々とため息を吐く。 「君は勉強は出来るが人間味がない。やりたいことくらい探しなさい。でなければ何も出来ないよ」 「はあ」 その晩、両親と囲んだ食卓でその話をすると、両親は烈火の如く怒り狂った。 「まずは勉強なんだよ!そんな教師の言うことは無視しろ!」 「夢を追って成功するなら、誰だって夢を追うわよ!」 「そうだよね」 両親の反応に対して冷静に言ったが、俺の胸にはわだかまりが生まれた。 俺は勉強以外、何が出来るんだろう? まわりの同級生はそれぞれに好きなことがある。 音楽だったり、文学だったり、スポーツだったり、俺はどれもそこそこ出来るがどれも好きなことではない。 ミュージシャンに画家になりたいという同級生が子供に思えていた。 子供みたいに好きなことにはしゃぐみんなが理解出来なかった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加