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その翌日、学校で龍介にこそりと聞いてみる。
「龍介のやりたいことって何?」
「俺?奏太がそんなことを聞いてくるの珍しいな。俺は子供と遊ぶことかな?だから保育士になりたいんだよ」
「そうなんだ……。知らなかった」
つい俯いてしまう。
「奏太、どうした?そんなこと、気にしてなかったろ?」
「俺にはやりたいことがないんだ……。勉強ばかりで、将来やりたいこともない。昨日寝ずに一晩考えて、やりたいと思ったのは家族で旅行に行きたいことなんだ」
くすりと龍介は笑う。
「それも夢だろう?夢に大きい小さい関係ないさ」
「うん。でも気付いたんだ。昨日、俺の写真のアルバム開いたんだよ。家族で写ってる写真がなくて、入学式と卒業式と勉強している写真しかなかった。俺は一体何をしていたのかなって」
龍介の顔が曇る。
「今、気付いたのか……」
俺は龍介の顔をじっと見る。
「龍介、知っていたのか?」
龍介はゆっくりと頷く。
「奏太のまわりはみんな知っているよ。奏太の両親は仕事一辺倒で子供のことを考えない。勉強以外にやらせていることはないって。奏太に不満がなさそうだったから誰も言わなかっただけだ」
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