彼を待つ部屋で

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目が覚めると私は風呂場にいた。しかも自分の家でなく、どうやら彼氏の家のようだ。なぜこんなところで寝ていたのかまったく思い出せないし、頭がぼんやりして身体に力が入らない。腰の辺りがひやっとする。触ってみると、スカートのお尻の辺りが濡れていた。浴槽には半分より少ない量の水が溜まっている。風呂にお湯を入れようとして滑って転び頭でも打ったのだろうか。  ふとバスタブ横の棚を見ると、いつも彼が使っているメンズ用シャンプーの隣りに見慣れないシャンプーとコンディショナーが置いてあった。ピンクの半透明の容器の中の液体は8分目より多いくらいでまだ使い始めたばかりのようだ。いつものシャンプーはかなり少なくなっているので違うものに変えたのかもしれない。  そんなことを考えながらゆっくりと立ち上がり、顔に傷がついていないか鏡を覗き込むが特に目立った外傷はない。目の下に少し隈ができていて元から白い肌はいつも以上に血の気がないように見え、それでも十分美しかった。もしかしたら貧血で倒れたのかもしれない。昔から貧血になりやすい性質なのだ。彼と付き合うきっかけも良くも悪くもこの貧血のせいだった。
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