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金賞を受賞したハルミの作品は、表彰状とともにしばらく学校に飾られていた時期があった。その展示ケースのそばをハルミが通りかかった時、美術の担当教師と、面識のない男子生徒が粘土細工のウサギに見入っていた。
「可憐ですね」男子生徒が教師に伝えた感想を、ハルミは偶然耳にしたのだった。
可憐……。その言葉の響きに、ハルミは鼓動が早くなるのを感じた。そしてその言葉をチョイスするセンスに、体の中心が温かくなる感覚を覚えた。
受賞したことよりも嬉しかった。自分が必要とされている気がした。この男子生徒ともっと分かり合いたいと思った。
「思い出してきた。私、あの人のこと、好きだったはず!」
自信にあふれた表情を見せたハルミに対して、ナナとカズナリは眉間の皺を増やした。
「とにかくさ、どっちかは思い出せないの? 名字か名前か」
「たぶん無理だなあ。一度も呼んだことなかったし」
「そんなやつの名前を、秘密の質問に設定するかね」
かすむ記憶の中で、可憐ですねと言ったあの生徒の横顔をハルミはおぼろげながら描いていた。美術の教師と並んでいる。学生服の上に、絵の具の汚れにまみれたエプロンを着けていた気がする。
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