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 父親に叱られながらも、ハルミはグループチャットにどんな返事をしたものか考えていた。また一方で、どんな手順でどんな頼み方をすればナナはこの答えが入手できたのか、とても興味を持った。まるで探偵のようだなとハルミは思った。 「そういえばナナちゃん、探偵になりたいって言ってたわよね。そういうところに就職するのかしら」母親が何気なくつぶやいた。 「なんでわかったの!?」心を読まれた気がして、ハルミは大声をあげた。母親も父親も、状況が呑み込めずにきょとんとしている。 「なんとかっていう探偵のマンガが流行ってたじゃない。ハルミも一緒に読んでたでしょう」  小学生の頃のことだ。ハルミの家にナナが遊びに来ると、決まってマンガを読んで過ごしていた。頭脳明晰な探偵が主人公の物語で、二人とも夢中で読んだものだった。 「なんでお母さんは」ハルミは、どうにか言葉を選ぼうと思いつつ、しかしあえてストレートな物言いにした。「そういう、どうでもいいことを覚えてるの?」  魚の小骨が気になるようで、母親は口元を手で隠しながら、箸を器用に動かして口の中をまさぐっている。母親はどう答えるのか、気になるハルミは箸の動きすらもどかしい。 「そんなこと言ったら、全部どうでもいいことじゃない」やっと出てきた母親の言葉は、やけにドライで、妙に説得力のあるものだった。そしてストレートでもあった。「無いと困る思い出なんて、そんなものないわよ」     
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