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 まだ時間が早いために客の少ない居酒屋に、ハルミは幼馴染みのナナとカズナリの二人を呼び出していた。 「ハルミから声をかけてくるなんて久しぶりじゃん」乾杯のあと、カズナリがポジティブな口調で言った。「就職、決まったんだろ」  ハルミはわざとらしく苦い表情をしてみせる。「だといいんだけど、それはまだ」 「7月になったら連絡くるんじゃなかった?」  ナナにはある程度のスケジュールを伝えてあった。そのタイミングで張本人から招集がかかれば、喜ばしい報告があると察するだろう。 「二人じゃないと相談できないことがあってね」  不思議な表情をするナナとカズナリ。しかしハルミは言葉を選んでいるのか、なかなか言い出せないでいる。悩みながら、無意識のうちにおしぼりを器用にいじり始めた。 「あれ。今でもやるんだ、それ」  ナナが指摘したのは、ハルミの手元にできたウサギだった。正確には、おしぼりで作ったウサギ。いつからやり始めたのかハルミも覚えていないのだが、布製の白いおしぼりがあると、つい作ってしまうのだ。 「なんかね、クセというか習慣なのかな」  言われてみれば確かに、わざわざ作ろうとするのも不思議なものだ、とハルミも思う。     
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