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何の会話もなくいきなり、ギフトが瀬田へと口付ける。
体と体とがぶつかりせめぎ合う鈍い音と、粘膜が触れ合う湿った高い音とが内階段内に響き渡った。
恐らくは、全くの第三者で傍観者の秋川の方が、誰かに気付かれやしないかとハラハラドキドキしていた。
しかし当たり前だが、そんな秋川の心配どころか存在さえ知らない瀬田は、ギフトの上体を押し退けやっと解放された唇でつぶやく。
「ヨシト・・・・」
瀬田の声がまるで喘ぐ様だったのは、きっと息苦しかった所為だ。と秋川は思うことにした。
ヨシト。どうやらそれが、カリスマフォトグラファー・ギフトの本名らしい。
余りにもあまりな光景が繰り広げられている為に、頭が回らず考えが上手くまとまらない秋川は、ただ事の成り行きを見ていた。それくらいしか出来なかった。
「最初からそう呼んでりゃあいいんだよ。前みたいに」
「離してください」
けして大声ではないが強い口調の瀬田にも、ギフトことヨシトは全く怯んだ風を見せずに、
「おまえ、変わったな。パッと見、全然判らなかった。今の方がゼッタイ、断然いい」
と、瀬田のあごを取り上を向かせる。
瀬田が顔を背けようがお構いなしだった。今度は両手で頭ごと抱えて、自分の方へと向き直させた。
「なぁ、又撮らせろよ。おまえにとっても、けして悪い話じゃないだろ?」
「!?」
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