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一瞬、撮らせろがヤらせろに聞こえたのは、石サバ経由でギフトの異名である『被写体と寝る男』を知っていた所為だ。と秋川は決め付けた。
しかし、そう聞こえた秋川の妄想癖?だけを責められないいやらしさが、確かにヨシトの声にはあった。
「断ります。もう、あなたに撮られる気はありません」
「・・・おまえ、自分の立場が分かってんのか?」
ヨシトの声が、口調が変わったのが、離れている秋川にもハッキリと判った。
顔を押さえ付けられて逃げることが出来ない瀬田は、覚悟を決めた様に目だけは真っ直ぐとヨシトを見ている。
そんな瀬田を、ヨシトは容赦なくなぶっていく。薄っすらとだが、笑ってさえいる。
「おまえはおれと違って、カミングアウトしてないんだよな?騒ぎになると、色いろとやりにくくなるんじゃないの?此処にはつい最近、転職してきたばかりだっていうし。おまえはさぁ、今度も黙っておれの言うこときいて、大人しく撮られてりゃあいいんだよ。せっかくキレイな顔と体してんだし」
「!?」
瀬田がヨシトの体をほとんど突き飛ばすようにして、ものすごい勢いで階段を駆け上がってきた。
秋川としてはとにかく、内階段内から出るのが精一杯だった。
案の定、身を隠す場所など在るはずもない五階の廊下で、瀬田と鉢合わせた。
「慎一さん・・・」
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