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秋川は飽くまでも、『経理部所属の融通が利かない、つまり空気の読めない生意気なメガネ男』という仮面を被り通した。
その実、内心でははらわたが煮えくり返る思いだった。
カリスマフォトグラファーだか何だか知らないが、あんなの、単なるパワハラとセクハラとのダブルコンボだろ!?っーか、デザイン部とのコラボ企画って、そういうことなのか?違うだろ!?と、心の中で限ってだが、ノリツッコミをせずにはいられない。
加えて、アジフライ定食の高揚感が一瞬にして雲散霧消してしまったことも、秋川にとっては忌いましかった。
何なら、唾でも吐きかけそうな勢い舌打ちをし、ヨシトは秋川の肩を放した。
秋川は取った瀬田の腕はそのままに、引き摺るようにしてその場を離れた。声だけで告げる。
「経理部へ行くぞ」
「はい」
エレベーターが来るのを待つ間、秋川は後ろを振り返らなかった。
瀬田の顔も見なかった。
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