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夏場のルームウェア兼寝間着らしい、Tシャツとハーフパンツとに着替えてきた瀬田へと、秋川は麦茶を注いだ。
それを一息で飲み干してから、瀬田は口火を切った。
「何か、噂とか聞いてますか?」
「デザイン部に同期がいる上司から、少しだけ。
写真のモデルに望まれてるって話だったけれども・・・・」
違うのか?と尋ねるのも、昼間の光景を見た後では白じらしいこの上ないので、秋川は言葉を濁した。
瀬田がため息を一つ吐いて、それを引き継ぐ。
「違いますよ。そんな穏やかな話じゃありません。あの人は写真家のギフト。今度、一緒に仕事をすることになりました。それで、おれにとってはデザイン学校の時の講師であり、元恋人です。本名は杉生嘉人」
「それで、ギフトか」
なるほど由来は分かったが、態度だけではなくビジネスネーム?まで人を食っていやがる。
自分自身が贈り物だとでも言いたいのか?と秋川は、ほとんど言い掛かりレベルでそう思った。
一方、瀬田とギフトこと杉生嘉人との関係には、改めて驚きはしなかった。
いくら鈍い秋川でも昼間の光景を目の当たりにすれば、それくらいの見当はつく。
瀬田が続ける。
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