0 彼氏と彼氏との新事情

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 午前二時近くに帰宅した瀬田は、居間のソファーに秋川の姿を見つけて、明らかに驚いた表情をした。 「・・・どうしたんですか?」  ただいま。も言わないで開口一番ソレかよ?と秋川は内心苦笑したが、それは少しも顔に出さずに、 「何だか寝付けなくて。おかえり。遅かったな。忙しいのか?」 と平らかに言った。  瀬田は心持ちうつむき加減で、早口で答えた。 「えぇ、ちょうど大きな仕事が動き出しそうなので。それで今、バタバタしています。もう、寝ますね」  やはり、おかしい。変だ。と秋川は確信した。 何時もの瀬田であったのならば、 「眠れないんですか?じゃあ、おれと一緒に一汗かきませんか?グッスリ眠れますよ」 と、セクハラ・フィットネスインストラクターさながらにいやらしく微笑んで、秋川を自分の部屋へと引っ張り込み、くんずほぐれつの全身運動に励むに違いない。 今となってはスラスラと思い浮かぶ自分が、秋川は怖いくらいだった。  居間を出て行こうとする瀬田の手を、秋川は取った。 「慎一さん?」 「晴季、もし、何か困っていておれに話せることだったら、何でもおれに話してくれ。おれに出来ることはないかも知れないけど、話を聞くことくらいは出来るし、おれもおまえの話を聞きたいと思っている」  「・・・・・・」  まるで、食欲がないワンコの前に、何時でも食べられるようにとエサを置くのにも似ている。  我ながら過干渉、又は過保護かな?と秋川は思ったが、瀬田はそれなりに煮詰まっているらしいし、これくらいはしておいてもいいだろう。と都合よく理由をつける。  さらに秋川は瀬田へと、とどめを刺した。 「何があってもおれは、おまえの味方でいたい」 「慎一さん・・・」 「おやすみ。晴季」  一度だけキュッと力を込めて自分の手を握り、そして直ぐに放した秋川に瀬田は、 「おやすみなさい」 と返して、自分の部屋へと引き上げて行った。  今、言うべきことは全て言い切った。 瀬田の姿が完全に見えなくなった途端、気が抜けたのか、秋川は大きなあくびをした。  眠いのを通り越してめまいがする。 何時もの夜であれば、夢の一本や二本見ている時刻だった。  瀬田に続いて、秋川も自分の部屋へと引き上げた。
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