2 ギフト

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 「慎一さんって、演技巧いんですね。ビックリしました」 「巧くなんかないさ。小芝居なんて、小学校の学芸会で『仔ダヌキその3』を演じて以来だよ」 「仔ダヌキですか?観てみたかったなぁ。可愛かったでしょうね・・・」 「おれが小二だから、おまえは六才の時だぞ?ゼッタイにおまえの方が可愛かったと思うが」  そんなどうでもいいことを秋川と言い合っている内に、瀬田は決意が固まった。 秋川の手を強く握りしめる。 「おれ、もう一度だけ撮られます。それで円く収まるのなら、いいです」 「本当に、いいのか?」 「え?」 「本当に、おまえはそれでいいのか?って聞いてるんだ?おまえはあいつの前に、前と同じ様に又、立つことが出来るのか?」 「それは・・・」  瀬田は言わなかったが、本当は嫌だった。 今は、やっと手に入れた秋川という名の幸せがある。  不幸にどっぷりと浸かり、何でも出来ると勘違いをしていたあの頃の自分とは違う。 違うはずだと、瀬田は思いたかった。  しかし、いくら会社が性的マイノリティに配慮しているからといえ、自分はもちろんのこと秋川の為にも、カミングアウトは避けたかった。     
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