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目下、経理部第一経理課に所属している秋川は公私ともに、瀬田が所属するデザイン部とは瀬田以外のつながりを持たない。
仕事上での接点の有無は、秋川個人の力では如何ともし難いが、せめて男女を問わず同期の一人でもいたのならば!と秋川は人事部へと逆恨みをせずにはいられなかった。
何時まで経っても、ウチのワンコの瀬田がエサへと食い付いてこないことに痺れを切らした秋川は、ドッグランの他のワンコたち、つまり瀬田の同僚たちから情報を得ようと考えた。
しかし、鷹揚にも話すのを待っている的な態度をとった手前、ズカズカと土足で乗り込んで行くわけにもいかない。
何よりも当のワンコ、瀬田本人へとバッチリ気付かれてしまう。
どうしたものかと、人知れず秋川が思い悩んでいる時に、きっかけは思わぬところ、まさかの身内からもたらされた。
秋川の直属の上司の石本貞子(もちろん、面と向かっては誰も呼ばないが)、通称石サバからだった。
「そう言えば、デザイン部が有名な写真家とコラボするんだってね?ルームメイトの瀬田君、最近忙しいんじゃない?」
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