133人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当に、瀬田君からは何も聞いてないの?」
「はい。今のところは、特に何も」
秋川の実にあっさりとした答えに、石サバは不満であることを隠そうともしない。
「緘口令でも敷かれているのかしらね。本決まりになるまで伏せておくつもりかしら?当の本人だったら、秋川君には何か話しているのかと思ったんだけれども。読みが外れたか」
と、盛大な舌打ちまでをもした。
「・・・・・・」
上下に分け隔てなく、つまり誰にでも厳しく且つさばけていることから、名前をもじって石サバと呼ばれている上司の、意外にギャンブラーな一面を見た気が秋川はした。
しかし、
「お役に立てなくて、すみません」
と口先だけでは殊勝にも謝っておく。
その実、秋川は心の中では全く別のことを考えていた。
ありがとうございます。石本さん。おかげで、いくら待っていても晴季に話してもらえなかったことを、やっと聞くことが出来ました。
秋川はもう、これ以上は待つ気などさらさらなかった。
どうやら、自分で思っていたよりも無理なガマンをしていたことに、今更ながらに気が付いた。
最初のコメントを投稿しよう!