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二人の新しい生活が始まったころ、もう7月になっていた。別居して暮らしていたものの生活パターンはあの同居していたころと同じになっている。
未希は嬉しそうだ。丸2年以上、別々に生活していたが、一緒に生活してみるとその期間がまるでなったように思えてくるから不思議だ。
「こうして生活していると、会ってからずっと二人で生活していたように思う。あの別れていた期間がなかったような気がするね」
「私もそう思っていました」
「あの別れていた期間は俺たちの試練のためだったようだ」
「辛かったけど、あの期間があったから今があるようにも思っています」
「俺には未希が必要と分かった」
「私も同じです」
「こうなるのが運命だったとこのごろ思う」
「私もあの日に出会ったのも運命だと今は思います」
二人でお風呂に入る。俺が未希と出会ってからはほとんど二人でお風呂に入っていた。ここのお風呂はアパートとは比べ物にならないくらい快適だ。
ボタン一つでお湯がバスタブに満たされる。バスタブも洗い場も広い。お湯は溢れるが二人でバスタブにも浸かれる。だから、二人はつい長風呂になる。この生活が毎日続くことを祈るばかりだ。
俺は未希の父親のようにはなりたくないとずっと思っている。そうならない覚悟ができたから、未希にプロポーズした。
二人とも過去に捕らわれることなく、前向きに一日一日を大切にして生きていきたい。未希とそう話し合った。
未希も俺から精神的にも自立しつつある。俺も未希に溺れないで自立しつつある。
お互いに愛し合っていることは心も身体も分かっている。だから、二人はいつも穏やかで喧嘩もしない。
俺は絶対に未希に小言なんか言わない。未希も不平を言ったりしないが、甘え方がうまくなった。それはそれでよしとしよう。俺は未希に前から甘かった。
俺の今の収入だと未希を家で主婦にしておくこともできるが、共働きをしている方が未希にはいいと思っている。
経済的にも余裕がある上に、社員食堂でサラリーマンの生活を見ているから、俺の仕事への理解も深まるだろう。それに働いて経済的に自立していると言う自信が未希を大人にしている。
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