1.初冬の雨の夜に家出少女を連れ帰った

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旗の台で乗り換え客が降りて行って、ようやく空いて来た。もう2駅で着くけど空いた席に座る。 今日も残業で遅くなった。残業手当が出るが、残業したすべての時間にではない。予算があるから割り当て以上はサービス残業になる。給料は多いに越したことはないが、これでも残業代を多く貰っている方だ。 駅に着くと9時を過ぎている。五反田で電車に乗る時に降り出した雨が激しくなっている。冬の冷たい雨は勘弁してほしい。 切符売り場の前で小柄な女の子が雨の降るのを寂しそうに見ている。着ているものはもう冬だと言うのにブラウスとスカート、素足にスニーカーだ。寒いのに上着も着ていない。いわくありげなので誰も声をかけないで通り過ぎて行く。 駅の近くはアパートが多いが、奥に入ると1戸建ての住宅が多くなって、どちらかといえば高級住宅街だ。駅を降りる人も良い身なりをしている。 この辺の娘ではないようだ。家出少女かな? 興味が湧いてくる。それなら条件次第でなんとかなるかもしれない。 俺は30を過ぎてもう31歳。普通なら結婚していてもおかしくない。ただ、女子とつき合うのが面倒くさいし、お金もかかる。手っ取り早くHだけできれば一番いいと思っている。 しばらく彼女を見ていると声をかけてみたくなった。目立たないように近づいていく。 「どうしたの? 誰かを持っているの?」 「いいえ、行くところがないので」 「家出?」 女の子が頷く。 「うちへ来ないか?」 「泊めてくれますか?」 「条件によるけど」 女の子は少し考えてから小さな声で答えた。 「したいようにしてもいいです」 「歳は?」 「18です」 「じゃあ、うちへおいで」 18歳ならいいかと、すぐに手を引いて歩き出す。もう今夜はどうしてやろうかと考え始めている。 住まいはここから歩いて3分の駅前の5階建てアパートの4階。駅前だが築年がとても古いので、この場所としては格安で2DKの部屋を借りている。 うなぎの寝床のようにダイニングキチンに6畳の部屋が二つ長く続いている。1階はコンビニなのでなにかと都合がいい。
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