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「提案て、何?」
美月を支えていた和歌が問い掛ける
「皆が良かったら、俺に弾かせてくれないかな」
その一言に、また皆がザワつく
叶多ってピアノも弾けたのか?
いや、確かに基本何でも卒無くこなせる奴とは思ってたけど…
「今回の合唱曲、特にCOSMOSが好きだったから家でも弾いたりしてたんだ。後は皆と合わせ練習させて貰えば何とかなると思う」
皆からは“すごい”、“さすが”と称賛の嵐だった
本当、すげーよ叶多…
「ただ、俺が伴奏をするとなればテノールパートはその分フォローして貰わなきゃいけないけど…」
「だ、大丈夫だ!そこは俺が何とかするっ」
ーーあ、つい勢いで…
「いやいや、輝楽パート違うし」
「しかもそのある意味美声でかよー」
途端に皆が口々に笑いだし、和やかな雰囲気を取り戻したように感じた
「大丈夫、叶多君が抜けた穴は大きいけど、頑張ってフォローするよ」
同じパートの一人が言い、他のメンバーもうんうんと頷く
「ありがとう。ーー加賀さん、俺が弾いても良いかな」
「ーーは、はいっ!お願いしますっ」
美月は九十度くらい体を直角に曲げて頭を下げた
「そうと決まれば音楽室行こ!理由が理由だから先生に言えば使用許可降りるはず」
急いで音楽室まで走り出した
叶多、お前本当に凄いよ
一時はどうなる事かと思ったけど、叶多なら本当に何とかしてくれるはず
きっと誰もがそう思い、確信しただろう
無事に使用許可が降り、まずは叶多の指慣らしから始まった
椅子に座ると一つ息を吐き、鍵盤に指を置く
その指の白く細長い事…
そして指が動き前奏を奏でた瞬間、皆の息を呑む音が一つになった
「…すげー」
「え、習ってた…?」
やる奴とは思っていたけど、改めてこの男の凄さをそこにいる全員が垣間見た瞬間だった
その奏でる音は美月のそれと何ら変わりなく、素人耳には完璧の様に思えたーー…
「…やっぱ何ヶ所か間違うし、加賀さんのようにはいかないけど。何とか形にはなりそう、かな」
一通り最後まで弾き終えた叶多が少し申し訳なさそうにポツリと呟いた
「そ、そんな事ない。それだけ弾ければ何とかなるから大丈夫!」
「加賀さん…ありがとう」
「じゃあ、時間までギリ頑張っても二回しか合わせられないからすぐやるよ!」
和歌の声に、すぐパートごとに分かれ整列した
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