輝楽

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教室内はシン、と静まり返ってしまっていた 「さーあと少し、最後まで頑張ろーぜ」 何とか雰囲気を戻そうと声を掛け、また皆それぞれ担当の仕事に戻っていきホッとする 大丈夫かよ美月… 美月を心配する気持ちと、すぐに保健室へ連れて行く迅速な対応が出来る叶多を凄いと思う気持ちがぐるぐる頭を回る そうだよな、あそこはすぐに美月に駆け寄るべきだった その叶多の行動により、美月の怪我でピアノ伴奏の不安が示唆された皆のヒソヒソ話す嫌な雰囲気を一気に黙らせた しばらくし、校内の出店や出し物の終了時間となった この後は軽く片付けをし、三十分後には体育館に集合し合唱の発表が待っている ーーガラッとドアが開き、叶多たち三人が戻って来た 「美月手、大丈夫か?なんて言われたんだ?」 今度は直ぐに駆け寄り言葉をかける 美月の手には包帯が巻かれ痛々しい 「…皆、ごめんなさい。軽い捻挫だって」 「マジか…」 その手での伴奏は絶対に無理だろう 再びザワザワし出す室内 「うちらどうなるの?」 「アカペラ?」 「無理!ねえ美香ピアノ習ってるよね、弾けない?」 「無茶言わないでよそんな急に無理無理!」 あぁ、嫌な雰囲気だ 一つになっていたクラスがバラバラになって行く感じがした 「ーーあのさ、」 それは正に鶴の一声 ある人物が一言口を開くと、ピタリと話し声が止む 「今痛い思いをして悲しいのは加賀さんで、ピアノ伴奏が出来ないことを誰よりも申し訳なく思ってるのも加賀さんだと思うんだけど。違う?」 ーーある人物、叶多の言っていることは正に正論すぎてぐうの音も出ない 「心配の声をかけるならまだしもヒソヒソ話したりするのは違うと思うし、わざと怪我した訳じゃないから責められもしないよね」 そうだ、その通り 何も間違っちゃいない 「ーーで、色々言ったけど…俺から提案があるんだ」
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