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和歌が台に乗り、こちらに向きを変える
口を動かし何かを言った
…“大丈夫”
そうだ、大丈夫
そしてピアノ伴奏者の叶多と視線を交わせ、手を挙げ用意を促す
叶多も一つ頷き、和歌の手が動くのと同時にピアノの前奏が始まった
…凄いよ叶多、とても今日合わせたとは思えない
一番が順調に終わり、二番に入る
“ーー時の流れに生まれたものなら ひとり残らず 幸せになれるはず”
今まで練習で何度も歌って来たけど、今初めてこの歌詞の尊さに気付く
そうだよ叶多…
みんなきっと、幸せになれるんだよ
中学の頃色んな辛いことがあった叶多
一度は自ら命を絶とうとした事もあったよな
でも、生きて…今こうして皆の為にピアノを弾いてくれて、大切な人も出来たーー
良かった、本当に良かった…
「ーーっ、」
すると、頬からツー…と何か熱いものが伝うのを感じた
何だこれ、涙…?
歌いながら急いでバレないように涙を拭う
ふと、叶多を見るとーー
叶多も一筋…泣いていた
以前叶多が言っていた
ーー“曲調は切ないけど、勇気づけられる気がする”
叶多も今、きっと同じ事を感じているんだ…
そして、
“君も星だよ みんな みんなーー…”
歌い切った…
大きなミスもなく、というか完璧だったんじゃないか!?
あまりの歓喜にガッツポーズをしたかったけど、何とか抑えて冷静を装い最後の礼をした
ピアノの方へ顔を向けると叶多と目が合い、お互い拳を掲げ合った
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