一対

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 職場で倒れ、搬送された病院で診断が下されたわたしの病気は、そんなに楽観的なものではなかった。  気を付けていなければ、また卒倒する可能性が大きい。仕事に復帰した後は、定期的に点滴に通うことが望ましいとされる。  実家に帰って以来、点滴どころか通院すらしていないわたしを、母は気遣っていた。  「あっちの病院は無理でも、こっちの病院で一回診てもらう」  と、面倒くさいことを言い始めたので、「心配ない」と、ばっさり言い切っておいた。  初診はなにかと面倒ではないか。  混雑する病院に通院するより、こうして家で昼寝をして、起きて、ぼうっとしているほうが体には良い気がした。   **  チイン。  仏壇の間から音がする。    北の部屋の縁側から裏庭を眺めながら、風を受けていた。  相変わらずキウイは葉ばかり立派である。座り込んで頬杖をついて眺めた。  曇天を背景に、一対の不毛なキウイは揺れ続けている。  花の咲く季節には、少しは愛らしくなるのだろうか、こいつらも。  (花をめでるくらいしか、使い道がない……)  ほとほと、役に立たないやつらだと思う。なりばかり立派になって――なんだかわたしは、このキウイから目が離せないのだった。  なにか、こいつらが訴えているような。     
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