15人が本棚に入れています
本棚に追加
職場で倒れ、搬送された病院で診断が下されたわたしの病気は、そんなに楽観的なものではなかった。
気を付けていなければ、また卒倒する可能性が大きい。仕事に復帰した後は、定期的に点滴に通うことが望ましいとされる。
実家に帰って以来、点滴どころか通院すらしていないわたしを、母は気遣っていた。
「あっちの病院は無理でも、こっちの病院で一回診てもらう」
と、面倒くさいことを言い始めたので、「心配ない」と、ばっさり言い切っておいた。
初診はなにかと面倒ではないか。
混雑する病院に通院するより、こうして家で昼寝をして、起きて、ぼうっとしているほうが体には良い気がした。
**
チイン。
仏壇の間から音がする。
北の部屋の縁側から裏庭を眺めながら、風を受けていた。
相変わらずキウイは葉ばかり立派である。座り込んで頬杖をついて眺めた。
曇天を背景に、一対の不毛なキウイは揺れ続けている。
花の咲く季節には、少しは愛らしくなるのだろうか、こいつらも。
(花をめでるくらいしか、使い道がない……)
ほとほと、役に立たないやつらだと思う。なりばかり立派になって――なんだかわたしは、このキウイから目が離せないのだった。
なにか、こいつらが訴えているような。
最初のコメントを投稿しよう!