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妙に、こいつらが、自分に重なっているような気がして。
唐突に家を出たというのに、主人からはメールのひとつすら、未だに来ない。
このまま帰らなくても、文句も言われないような気がした。
それを考えると、心に真っ暗な穴が空くようである。未だにわたしは、入院中に、他の患者たちが家族と過ごしている様子が心に溜まっていた。その煩い風景が、いつまでも体から出て行かない毒のように全身を侵しているのだった。
仕事を辞めるかどうかについても、最後のふんぎりがつかないままだ。
退院した当日は辞める気構えができていたのに、時間がたつと、いや、ここで辞めたらいけないと思うようになった。
辞めるべきなのは仕事ではなくて、不毛な関係の方かもしれない。
チイン。
読経の声が微かに聞こえる。
わたしは痩せた自分の体を見下ろす。
病んでから、体は一気に痩せた。鶏ガラみたいになった足、ぺたんこになった胸。
まだそんな時期ではないのに、生理もいつなくなるか分からないほど、不定期になっていた。
もうあと少しで、四十を迎える。
どうだろう。今から出直せば、まだ何とか間に合うだろうか。
実をつけることが、叶うだろうか。
空は、今にも降りだしそうな黒い雲に覆われていた。
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