一対

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 その重たい空の下を、風はますます冷たく鋭く吹き付けてくる。けれどキウイはわさわさと呑気に揺れ続け、でかい体を図々しく棚に絡ませて、裏庭を我が物顔にしているのだった。    いつの間に仏壇の前から離れたのだろう、母が庭で草むしりをしているらしい。  ごそごそ動き回る気配がしていたが、やがて母はのそのそと裏庭まで回ってきて、不毛でバカバカしいキウイの棚の下にまでやって来た。    「あんたそこに立つの好きねー」  寒くないの、体に悪いよー。  母はこちらを見ずにそう言った。  そして、丁寧にキウイ棚の草をむしり、棚に絡むキウイの枝を調べている。  今にも降りだしそうな空。  寒い11月の風。  母は淡々と、キウイの世話をしている。メス同士だとかいう、不毛のキウイを。  不意に、あっと母が叫んだ。  なにごとかと思っていたら、母はキウイの棚の下でこちらを振り返り、凄い勢いでおいでおいでをし始めた。  その様子がただ事ではないので、寒くてできれば降りたくない裏庭に、素足にサンダル履きで、わたしは降りた。早く来て見てごらんよ、アンタ。興奮している母の横に来て、指さされる方を見上げた。  「あー」    不毛の木に、付いていたもの。  それは。    「メス同士だったんじゃないのー」  「……って、聞いたんだけどねえ」     
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