一対

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 ガラス戸の外で寒そうに揺れている奴らは、まるでわたしみたいだと思う。 **  「結婚はするけれど、子どもは作らない前提で」  それが付き合いの条件だったことを、わたしはどうしても両親に言えなかった。  三十路半ばで出会い、付き合い始めた彼は、仕事人間だった。明けても暮れても仕事、下手したら会社に寝泊まりするほどの仕事人間で、デートをすっぽかされることもあった。  それでもなんとか結婚までこぎつけることができたけれど、わたし側が我慢してきたことが大きい。  結婚はする。子供はいらない。  その条件を飲んでくれなければ、付き合いはできない。  そう言われても、わたしは「わかった」と答えて、彼と付き合う方を選んだ。    俺もそれなりの年齢だし、親も望んでいることだから、今から付き合う相手は結婚を前提にしてもらいたい。  ただし、それなりの年齢なので、これから子供を産み育てていくのは、ちょっと。  というのが、相手の言い分であり、一応は筋が通っていた。  (トシトシって言うけれど、まだ五十にもなっていないのに)  内心、わたしはそう思っていたけれど、自分の言葉を絶対に曲げない彼に、それを言うことはできなかった。  結婚した。  相変わらずの生活が続いた。  仕事、仕事、またまた仕事。     
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