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タクシー以外に、自家用車がすうっと近寄ってきて、際で停まることもある。電話で家族を呼んで迎えに来てもらったのだろう、人々は笑顔で車に乗り込んで行く。
わたしはタクシーで、誰もいない自宅に戻り、その場で会社に電話をして、休養したいことを伝えた。
夫には、心身ともに疲れたから、ちょっと田舎に戻ってくる、とメールを打った。
そのまま、わたしは、着の身着のまま、実家に戻った。
車で二時間ほどの、田舎に。
夫からメールの返信も、電話も、一切、ない。
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仏壇の上に遺影が飾られ、毎日新しいごはんが供えられる。
前日の古くなった冷たいごはんは、母が自分で食べている。
広々としたテーブルに隣り合って食事をする時、母が温かいごはんの上に、仏さんから下げた古いものをあけて、もそもそ食べているのを横目で眺めた。
いつも一人で何してるのと聞くと、なにって、色々あるのよ、と母は答えた。
年金暮らしだから、贅沢はできない。といっても、もともと質素を好む母である。旅行や、外食などをするわけもない。
ここ数日の滞在で母を見ていると、どうやら日がな一日、庭で草をむしったり、家庭菜園の手入れをしたりしているようだった。
「大根、うまくできれば送るよ」
と、母は言う。
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