<第一章> 夢の出会い(1)男の夢

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   奇妙な時代劇の夢は、七度目を最後に、何故かピタリと見なくなった。  やがて半月ほどの時が過ぎ、残暑厳しい夏も終わりを告げるころ、ある深夜のことだった。  今夜もお気に入りの音楽が、薄暗い部屋をゆったりと包んでいる。インターネット配信で音楽を楽しむ時代だというのに、骨董品並みになってしまったMDコンポから流れている。  ヒーリング系のBGMは、まるでシルクのベールのように滑らかに空間を包んでいた。幻想的なメロトロンのコーラス・エコーに、哀愁漂う柔らかな歌声が重なり合って、男の疲れた心を癒してくれている。  伝説的な英国プログレッシヴ・バンドの一つ、10CCが奏でるクラシカルな名曲、♪I’m Not In Love♪♪。  男が深夜にパソコンへ向かうとき、いつも決まって掛ける古いUKプログロックの中でも、珠玉の一曲だ。 「やっと見つけたぞ! いつもの天女だ。どうも何処かで会ったような? ・・・・・・透き通るような白い肌、口元の小さなホクロ。うんん・・・・・・、どこか懐かしい・・・・・・」  高鳴る胸の鼓動を抑えながら、男は(ひと)り呟いた。そして、神がかりのような奇妙な感覚を覚えると、深く息を呑み込んだ。    
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