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それは時々届くウェブメールの一つ。普段ならば見もしない宣伝広告で、ただの迷惑メールに過ぎないものだった。しかしこの夜だけは、見えざる力に導かれるように、男の人差し指はひとりでに、マウスのボタンをクリックしていた。
パソコン画面に現れたホームページには、全国の新規オープンのナイトクラブの紹介が載せられていたのである。
男は地域別検索の選択バーを、『東京』に合わせてみた。
すると、老舗の高級クラブがひしめくという銀座にしては珍しく、新規開店の小さなクラブのページが現れた。
店の名前は、『クラブ・エテルナ』。
どことなく意味深なそのネーミングに、男の視線は誘導された。
店のトップページを開くと、水色とピンクを基調にした上品なつくりで、看板娘三人の写真が煌々と並び、男心をくすぐってくる。
そこで男の目は、一点に釘付けになってしまったのである。
言葉を失うほどの衝撃とは、まさにこのことだ。三人娘の中でも店のナンバーワンとして、トップページのセンターを飾るホステスの写真が、男の眼に焼付いたのである。
上品な純白のロングドレスを身に纏い。
ホワイトサテンのように透き通るほどの白い肌。
黒目勝ちで今にも吸い込まれそうな魅惑の大きな瞳。
ストレートロングの黒髪は、サラサラとたなびくようだ。
そのホステスは、僅かに首を傾げて天使の微笑みを魅せていた。
近ごろ男が見る夢には、美しい天女が、いつも決まって現れた。煌めくホステスの写真は、夢の天女そのものであった。
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