<第一章> 夢の出会い(2)夢の天女

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  そろそろ待つこと30分――――  張りつめた糸が弾性限界を超えるように、男の心の均衡は破れた。心の中で始まった攻防戦は終結を迎えたのである。  結果は、早く会いたいとの革命軍が、待とうと思うの防衛軍に、勝利してしまった。 「まだですか?」  男は堪らず、黒服のボーイを呼びつけた。 「申し訳御座いません。お客様。もう暫らく、お待ちください」  若いボーイは、マニュアル的な営業口調の対応だった。 「いつまで待たせんだ! 指名してるんだが?」  男は声を荒げてしまった。敗北した忍耐心は、とうとう言葉の制御もできなくなっってしまったようだ。 「本当に、申し訳御座いません。お客様。ご指名のホステスは、ただ今、先約の方に接客中でして、もう少々・・・・・・」  ボーイは深々と頭を下げるや否や、慌ててマネージャーのところへ走った。    
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